https://www.yatex.org/koeki/2024-ksd/
情報技術は様々な分野に浸透した。デスクワークの行なわれる場所には必ず 計算機(PC)が配備され、それなしでは業務が全く成り立たないまでに至った。 また、個人生活においても携帯電話を代表とする情報通信機器が普及し、 やはりそれに依存する人々が増加している。
いつのまにか普及した感の強い情報技術であるが、それらはどのような目標で 技術開発されてきたのだろうか。多くの場合それらは、人々の欲求を満たすことを 目指して開発されてきたものであるが、 将来を見越した公益的精神に基づく研究開発も多い。 しかしながらマスメディアにそうした目標や活動が正しい文脈で紹介されることは ほとんどなく、ほとんどの人にとって「IT」と「公益」が密接な関係にあるとは 感じられないのが現状である。
本講義では、情報技術の発展を公益・非公益という側面から振り返り、 研究開発の根底に流れる精神がわかりやすく 一貫したものであることを紹介する。 また、情報技術を公益的な方向に進めるために、 利用者全体が意識しておくとよいことの一例を紹介する。
「此処より下に家を建てるな」 石碑の警告守る <宮古・姉吉地区>
(外部リンク)
ハイテク、ブロードバンド、iPhone、Android、 パソコン、最新アプリケーション、デジタルデバイド(情報格差)、疎外感……
これらは商業的側面にすぎない。
単純: 「誰かに情報を伝えること」
「誰か」とは誰なのか? 自分、仲間、他人、現在の、未来の…
「誰にでも」ではなく「顧客にだけ」
今の顧客が未来の顧客とは限らない。
→ 会社と契約し続けなければ情報が伝わらなくなる。 たとえそれが自分自身の情報でも…
→ 金の切れ目が縁の切れ目(自分の情報資産もさようなら)
一度掴んだ顧客は離さない(ベンダーロックイン) → 「サポート停止」+「バージョンアップ」のサイクル
※「クラウド」←→「オンプレミス(自組織内管理)」
「顧客にだけ有利に…」が行きすぎると疎外合戦になる。
「標準化」作業…… → Web技術
1991年8月6日
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The WWW project merges the techniques of information retrieval and hypertext to make an easy but powerful global information system.
The project started with the philosophy that much academic information should be freely available to anyone.
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By Tim Berners-Lee
WorldWideWeb project
C.E.R.N.
1993年、世界初のグラフィカルブラウザ Mosaic の無料公開により爆発的に普及。
文字、画像、音を伝えるシンプルな道具 ↓ Windows95 でMS参入(1995年) ↓ IEで庶民の目を引く独自機能を追加 ↓ ソフト供給者による機能追加競争 (NetscapeとIEの「ブラウザ戦争」) ↓ "to anyone" の崩壊 ↓ 反省 ↓ W3C(The World Wide Web Consortium)設立 ↓ 標準化推進 ↓ HTML4で "to anyone" を取り戻す (1999〜2000年)
HTML(Hyper Text Markup Language; Web文書の記述言語) の設計思想は:
画像表示機能、広い画面、色情報、視覚、聴覚、 いずれが欠けても、等しく内容を伝える。
使用機種、時間が違っても正確に伝える。
「みんなのため」を強く意識したもの。
情報技術はつねに、独占したがる技術と "to anyone" 技術のせめぎあい。
「みんなでつながろう」を具現化したもの。
ソフトウェアは知的財産である。 作者は大きな対価を得るべきで、 その権利は保護されるべきである。 |
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ソフトウェアは知的財産である。 知的財産は広く共有すべきである。 |
フリーソフトウェアが自然発生した。
「みんなで自由に使おう」を具現化したもの。
ソフトウェアの公益性を語る上で欠かせない存在。 ソフトウェアは自由であるべきという思想で、 様々なフリーソフトウェアを生み出している。
創始者: リチャード・ストールマン
これらをまとめたものがGPL(GNU Public License)であり、 これらの自由は配付した相手、更にその次の人、更にその次の…、 限りなく適用されなければならない(GPLの伝染性)。
みんなのためにソフトウェアを作る。 それを使った人がhappyになるため。 それを改良したい人がhappyになるため。 改良したものを使った人がhappyになるため。
そんなものあるのか?
ある
それも当たり前のように
Emacs, Linux, Android(カーネル部分), Firefox, Chromium(Chrome), Thunderbird, LibreOffice, GIMP, Blender, Ruby, Python, Java(OpenJDK), Nextcloud, Jitsi Meet, ...星の数程...
最も名の通っているものは Android?
GPLが持つ「全てのソースプログラム公開義務」があると、 「企業秘密」が守れないのではないかという不安感。
GPLの高すぎる理想は導入に二の足を踏ませやすい。
自由の強制はしない緩いライセンスが好まれる
ソースプログラムを公開することに主眼を置いたもの
→ オープンソースソフトウェア
多くのオープンソースソフトウェアが普及した。
ファイルに保存するときの書式がオープンで利権中立であれば、 "to anyone" は時空を越えて守られる。
それが大切と啓発することも重要。
"to anyone" であるべき情報のやりとりには「オープン」 であるものを採用すべき。
市で使用する情報システムはオープンなものに。
「コスト削減」だけ期待して始めると沈没する。 コミュニティを価値と捉えられるかどうか。
家賃補助 | (8年間)県の補助50%、市の補助50%(最大) |
航空運賃補助 | (5年間)島根県/米子空港の場合50%補助 |
通信費補助 | (5年間)50%補助 |
雇用補助 | 1人あたり県と市合わせて130万円 |
人材確保育成補助 | (3年間)所要経費の50% |
→ さくらインターネットが「ガバメントクラウド」提供事業者に選定、日本企業で初
重要なのは:
「自由」と「オープン」を大切にするマインド
OSSに対して、機能と費用で比べたら価値を見失う。
データもシステムも自由なライセンスで固めておかないと未来に残せない。
yuuji@koeki-u.ac.jp