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(8) 06/10の授業内容:著作権
[1]著作権
卒業論文やレポートを作成する際には、書籍や雑誌記事、新聞、インターネット上の文書など、様々な資料を参考にすることが多い。こうした資料の内容を自分のレポートに記載する場合、適切な方法を用いなければ、剽窃(ひょうせつ)=パクリ・盗作となってしまう。剽窃は後述する「著作権」の侵害となり、告訴された場合は5年以下の懲役または500万円以下の罰金となる。
著作物とは何か
著作権の保護対象となる著作物は、著作権法(第2乗1項1号)により次のように定められている
思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
したがって、以下はいずれも著作権法上の著作物に該当する。
- 言語:書籍、論文、レポート、記事、小説・・・
- 音楽:歌詞、楽曲・・・
- 美術:絵画、書、彫刻、版画、漫画・・・
- 映画:映画、ビデオ、DVD・・・
- その他:プログラム、振付、写真・・・
- アイデアそのものは著作物にあたらない
著作物
著作権(著作財産権)は著作物の利用を許諾したり禁止することで著作者が経済的損害から守られる権利(=自分が創作したものを他人に勝手に利用されないための権利)であり、著作者が個人の場合、死後50年まで保護される。
著作物を利用したい場合は、著作権者から許諾を得る必要がある。書籍やWebページの内容の完全な丸写しや多少いじっただけで、あたかも自分の書いた文章であるかのようにレポートに掲載する剽窃は、著作権侵害となる。
では、書籍やWebページに記載されている情報を利用する際には全て著作権者に許諾を取らなければならないのであろうか。
著作権の及ばない範囲
著作権の保護期間内であれば、著作物を利用するためには原則として著作権者の許諾を得る必要がある。しかし、以下のようなケースでは著作権が及ばないため、著作権者への許諾を得る必要がない。
- 国等の著作物(著作権法13条)
- 私的使用のための複製(著作権法30条)
- 図書館等における複製(著作権法31条)
- 引用(著作権法32条)
- 学校教育番組の放送等(著作権法34条)
- 学校その他の教育機関における複製(著作権法35条)
- 公開の美術の著作物等の利用(著作権法46条)
このうち、レポート作成に関係するのは4番の引用である。
[2]引用
引用について、著作権法(第32条1項)では次のように定めている。
「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の 引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」 (著作権法第32条1項)
公正な慣行とは、以下の条件を満たすということになる。
- 引用する必然性があり,引用範囲にも必然性があること
- 質的にも量的にも引用先が「主」,引用部が「従」という関係にあること
- 本文と引用部分が明らかに区別できること
- 引用元が公表された著作物であること
- 出所を明示すること
したがって、長々と引用し最後に自分の意見を数行書く程度では引用とは認められないし、自分は引用しているつもりでも本文と引用部分が区別できなければ引用とはならない。また、出所を明示しなければ引用とならないし、読み手が引用した文章を読んでみたいと思ってもその文章を入手することも出来なくなってしまう。
引用方法[1] 短い文章をそのまま引用する場合
引用部を「」でくくる。一字一句、資料の通りに正確に記述する。
神田は、自転車運転中の携帯電話を用いた通話が運転パフォーマンスにおよぼす影響を調べ、「携帯電話通話運転では、ふらつきは片手運転と同程度であるが、ライト点灯への遅延反応が生じ、外界に対する注意の低下が見られる。」1)ことを指摘している。
引用方法[2] 長い文章をそのまま引用する場合
前後を1行あけ、引用部を全体的にインデントする。一字一句、資料の通りに正確に記述する。
神田は、自転車運転中の携帯電話使用が運転パフォーマンスにおよぼす影響を調べ、以下の結果が得られたことを指摘している。
メール条件では、他の全ての条件と比較して走行ポジションのRMS値が有意に増加し、両手条件、片手条件と比べて反応時間が有意に増大し、走行速度が有意に低下した。また携帯電話に対する総注視時間、1回あたりの注視時間は、前方に対する注視時間よりも長く、2秒を超える注視も確認された。通話条件では、両手条件と比べてRMS値、反応時間が有意に増大し、両手条件、片手条件と比して走行速度が有意に低下した。また携帯電話を使用した2条件では、ライト点灯に対する反応課題において遅延反応数が多かった2)。
また、・・・
引用方法[3] 自分で要約して引用する
この場合は、必ずしも「」でくくる必要はないが、引用したことがわかるように著者名をつけるなど、引用していることがわかるようにする。
神田3)は、自転車運転中の携帯電話を用いた通話が運転パフォーマンスにおよぼす影響を調べ、ふらつきの度合いは単純な片手運転と同程度であるが、ライト点灯に対する遅延反応が生じることを指摘している。
[3]本文中での引用マークのつけ方
本文中で資料との関連付けは大きく分けて2つの方式がある。
バンクーバー方式
引用箇所に、登場順に1)、2)、3)のように連番をふる。
神田は、自転車運転中の携帯電話を用いた通話が運転パフォーマンスにおよぼす影響を調べ、「携帯電話通話運転では、ふらつきは片手運転と同程度であるが、ライト点灯への遅延反応が生じ、外界に対する注意の低下が見られる。」1)ことを指摘している。
レポートの末尾の引用文献欄では番号順にリストを記載する。
引用文献
1)文献1
2)文献2
3)文献3
ハーバード方式
引用箇所に、神田(2008)のように著者名と発行年を記載する。著者が複数の場合、神田・佐藤(2005)とする。
神田(2008)は、自転車運転中の携帯電話を用いた通話が運転パフォーマンスにおよぼす影響を調べ、「携帯電話通話運転では、ふらつきは片手運転と同程度であるが、ライト点灯への遅延反応が生じ、外界に対する注意の低下が見られる。」ことを指摘している。
レポートの末尾の引用文献欄では著者名の50音順(欧文の場合や和文と欧文が混在する場合はアルファベット順)で記載する。同一著者の複数の文献を引用した場合は、発行年が古い順に記載する。同一著者の発行年が同一の複数の文献を引用する場合は、神田(2008a)や神田(2008b)のようにa、bとつけ、区別できるようにする。
引用文献
伊藤太郎. 2005. 資料名
神田直弥. 2004. 資料名
神田直弥. 2006. 資料名
神田直弥. 2008a. 資料名
神田直弥. 2008b. 資料名
[4]引用文献リストの書き方
引用した資料を読者が入手しようとした際に必要となる情報を正確に記載する。
単行本
著者名. 書籍名. 版表示(2版以降), 出版社, 発行年
- 芳賀繁. ミスをしない人間はいない. 飛鳥新社, 2001
- Hancock, P.A.; Desmond, P.A. Stress, workload and fatigue. Lawrence Erlbaum Associates, 2001
- 坂和正敏, 矢野均, 西崎一郎. 情報科学入門. 朝倉書店, 1995
論文集(書籍の中の特定の章)
著者名. "論文名."書籍名. 編者名. 出版社, 発行年, ページ
- 石田敏郎. "交通システムと人間." 交通行動の社会心理学. 蓮花一己編. 北大路書房, 2000, p.140-153
雑誌内の論文
著者名. 論文名. 雑誌名. 発行年, 巻, 号, ページ
巻、号はVol.12, No.1というようにVol.とNo.を使う場合と、12(1)のように簡略化して書く場合がある。年に1冊しか発行されていない雑誌は巻のみで、号が無い場合がある。
- 神田直弥,石田敏郎. 出合頭事故の分析による優先側運転者の無信号交差点進入行動の検討. 交通心理学研究. 2002, Vol.18, No.1, p.7-18
- 神田直弥. 酒田市民を対象にした住宅防火意識調査. 東北公益文科大学総合研究論集. 2007, Vol.13, p.63-85
Webページの場合
著者名. "ページの題名." 更新日付, URL, (訪問日)
Webページは、知らないうちに内容が改訂されてしまう可能性があるため訪問日を必ず記載する。更新日は記載がある場合はなるべく記載する。著者名は明確に記載がなくても、©Naoya Kandaのようにページ内に著作権の表記がある場合は、これを利用する。
Wikipediaは頻繁に情報が更新されてしまうため、引用しないこと。
- 内閣府. "平成20年版交通安全白書." http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h20kou_haku/index.html, (参照2010-02-16)
[5]引用時の注意 孫引きをしない
- 孫引き(Yahoo!辞書)
孫引きは引用の引用であり、基本的にしてはならないこととされている。理由は以下の通り。
- 原典を読む手間を省き、手を抜いていると判断される可能性がある
- 引用した人は、自分にとって都合の良い部分しか引用していないかもしれない
- 引用した人は、原典の解釈を間違えているかもしれない
例を挙げてみよう。
論文A(原典)
日中に自動車のヘッドライトを点灯して走行すると、信号のない交差点において交差道路を走行する相手車両が自分を発見するタイミングが早まるため、自分が交差点から離れていても一時停止して通過待ちをしてくれる割合が高まる。ただし、このような効果が見られるのは双方の道路の交通量が少ない交差点のみであり、かつ照度が5000ルクス以下の場合に限定される。
論文B(一部分のみ引用)
論文Aによると、「日中に自動車のヘッドライトを点灯して走行すると、信号のない交差点において交差道路を走行する相手車両が自分を発見するタイミングが早まるため、自分が交差点から離れていても一時停止して通過待ちをしてくれる割合が高まる。」ことが明らかになっている。したがって、車両は走行中常時ライトを点灯するべきだ。
論文C(誤った解釈)
論文Aは、日中に自動車のヘッドライトを点灯して走行してもほとんど効果が得られないことを指摘している。ライトの常時点灯はバッテリの消耗を促進するだけであり、環境への負荷を考えると即刻中止すべきだ。
論文Aではライト点灯の効果が部分的に見られることを指摘している。5000ルクスというと晴天時では日没の約30分前の時間帯の明るさに相当するが、曇天時では14時頃でも5000ルクスを下回ることが多い。とすると、結局のところ常時点灯をした方が良いのか、しない方が良いのか微妙なところであり、絶対にすべきとか、即刻中止すべきとは言い切れない。論文Bや論文Cだけを読んで、原典である論文Aを読まないと、こうした点に気づくことができない。
[6]出席課題
ワープロ課題を継続する。今回の作業は以下の通り。
自分が選んだテーマについて調べた論文や統計データの内容をまとめる。その際、適切な引用になるように配慮する。バンクーバー方式で引用マークをつけ、ページ下部に引用文献リストを作成する。
作成したファイルを、reference.odtという名称で保存し、添付ファイルで送る。
- To:課題提出用メールアドレス
- Subject:literacy08
- 提出期限:授業終了時まで。