現在官公庁のホームページには、フラッシュなどの派手な効果が使われていない。 また色合いのはっきりしたものに変更されている。ダウンロードすべき様式は、 PDF という形式のファイルに次々と変更されている。 新しい技術についていけないので使用していないというわけではない。 これはなぜなのだろうか?
読みやすい電子文書とはどういうものか、考えてみよう。
情報バリアフリーという概念を思い出そう。情報は、 あらゆる人全てが亨受すべきである、というものであった。 障害を持っていても、 情報提供機器の装置やソフトウェアを改善することにより、 情報を得ることができるようにする取りくみのことであった。 しかし、実際はディジタルデバイド(情報格差)が発生しており、 現実的には解決されるべき問題が発生している。
ディジタルデバイドには、情報手段の格差、通信手段の格差などがある。
ディジタルデバイドにおける弱者には、発展途上国の市民や、 山間地、離島の市民(過疎型)、通信手段の操作に困難を伴う高齢者、 周辺装置(キーボード操作や画面) の操作や確認が難しい障害を抱える人々などが挙げられる。
ここ 10 年で、PC の販売は増加し、 出荷台数が頭打ちになった。多くの PC には、 Microsoft 社製の基本ソフトウェア、通称 OS (Operation Software) として、 Windows がインストールされている。通常の状態では、 PC を購入すると Windows がインストールされており、 Windows には、Microsoft 社のワードプロセッサ Word や、表計算ソフト Excel などが梱包されている。
情報通信の手段に関しては、"コンピュータネットワーク" で学ぶことができる。
2007 年度には Windows の新しいバージョンが発売予定であるが、 この購入、あるいは購入後に発生する問題について考えてみる。
Windows のバージョンが新しくなるということは、 基本ソフトウェア "Windows Vista" を購入しなければならないということである。 基本ソフトウェアが要請する機械の能力 (スペック) は、 当然現在持っているものより上であるから、 新しい計算機を購入する必要がある。
経済的に購入できたとしても、Windows の場合はアプリケーションソフトも梱包されているため、 古いソフトウェアで書いたデータがうまく動かない可能性がある。 また、古いバージョンのものは、新しいデータ形式になっている可能性があり、 更新すると、古いアプリケーションソフトではもはや見ることができなくなる。
結局、しばらく、新しいソフトウェアに乗換えるのに時間がかかる。 何らかの理由で乗りおくれた人々は、 セキュリティ保証の期限が切れた計算機を使うことになる。
実際、"Windows 98" "Windows 98 SE" および "Windows Me" は、 サポートの打ち切りが 2006 年 3 月 26 日に発表され、 2006 年 07 月 11 日にサポートが打ち切られた。
結論:電子文書は、基本ソフトウェアに関係なく常に閲覧、 加筆修正することができるものでなければならない。 また作成するソフトウェアのバージョンアップに関係なく閲覧、 加筆修正されるべきである。さらに、電子文書を閲覧するためのソフトウェアは、 無償であるべきである。とくに、公的機関においては、 電子文書形式の書類を配布する際、 有償かつ企業固有のソフトウェアを使用すべきである。
PDF (Portable Document Format) ファイルは Adobe System 社が提供する電子文書形式である。 基本ソフトウェアによらず、 オリジナル文書を再現することが可能であり、 読むソフトウェアは 無償 で配布されている。
本講義では、PDF ファイルを作るための組版ソフトウェア LaTeX の実習を行う。(第 5 講以降)
なぜ多様な基本ソフトが生み出されるようになったのか、 その背景を知ろう。
コンピュータは 2 進数による代数 (ブール代数, Boolean) 演算を行う機械のことである。 基礎となったものはチューリング計算機というもので、 Turing により 1936 年に開発された。 電子回路に演算とデータを組み込むことにより、 1970 年代には急速に小型化、高速化した。 これらはノイマン型計算機と呼ばれる。 演算やデータがメモリに呼び出され、実行される。
大きな企業や研究機関によって使用されていたが、 1986 年に IBM により個人用計算機 (PC/AT, Personal Computer/Advanced Technology) が開発され、 普及した。IBM が計算機の内部を公開する方針を取ったため、 各社が内部仕様を共通化することができたためである。 現在市販されている個人向け計算機, PC(Personal Computer), はほとんど PC/AT 互換機である。
電子回路に演算の仕組みを組み込みデータを取り入れる方法は機械によって異なるが、 それらを統合して計算機として使えるようにするプログラムを、 基本ソフトウェア、OS (Operating System) と呼ぶ。
PC/AT では、Microsoft 社製の MS-DOS (Microsoft Disk Operating System) という OS が採用された。これは、文字をキーボード入力し、結果を得るものである。 MS-DOS は、シングルタスク OS であり、 1 つのソフトウェアしか動かすことができなかった。
その後、キーボードにより命令を入力する CUI(Character User Interface) ではなく、 マウスとアイコンを使用した GUI (Graphical User Interface) にこだわった OS も出現した。しかし高価であり、一般には普及しなかった。 Macintosh 社の制作した Apple Computer である。 Microsoft 社は、その後、Windows という OS を開発した際に GUI 仕様にこだわった。それは、Apple Comupter の成功があったためであるとされる。
このようにして、 比較的安い PC/AT 互換機で MS-DOS か、 それともかなり高価な計算機を丸ごと購入し、 マウスとアイコンを使う Apple Computer か、 という選択が現れた。
一方、AT&T 社が主体となり、 C 言語で作られるハードウェアに寄らない OS の開発も進められた。 これが UNIX と呼ばれるものである。ソースコードが簡易であったため、 多くの計算機に移植された。
さまざまな計算機に移植できるようなソフトウェアをマルチプラットフォームと呼ぶ。
UNIX は商用 UNIX および Linux などがもとにする System-V 系 UNIX、 大学関係者などのボランティアにより開発される BSD 系 UNIX とに大別される。 System-V 系は、フィンランド人の大学院生 Linus Trovalds (当時) が GPL (GNU General Public License) というライセンス体系に基づき、独自にコードを開発した。 GPL に基いた開発は、UNIX において基本ソフトウェアだけでなく、 アプリケーションソフトウェアにも浸透している。 一方 BSD (Berklay Software Distribution)系 OS は、 BSD ライセンスに基づきコードが開発された。
UNIX は、マルチタスク仕様であり、 複数のソフトウェアを同時に動かすことができる。
現在のほとんどの計算機はマルチタスク、GUI の OS を塔載している。 ライセンスに対する企業の姿勢が、そのまま開発される OS に直結している。
本日のレポート課題 : (Subject: 第 2 回レポート「コンピュータの歴史」)
宛先は
it-dtd-1009-rpt@e.koeki-u.ac.jpである。